安定度の高いギタースタンドとして定評のあるHercules(ハーキュレス)製のギタースタンド。いろいろな種類があってどれを選んで良いかわからなくなりがちです。最近新しいギターを買い、せっかくなのでHerculesのギタースタンドを買おうと、それぞれの違いを調べたので解説したいと思います。
100年近い歴史を誇るHercules
Herculesの歴史は長く、Herculesのギタースタンドを製造しているKHSは1930に創業しています。ざっと100年の歴史を誇るメーカーです。
現在でも世界中で愛されている楽器スタンドメーカーであり、ギターだけでなくベース、マイク、キーボード、管楽器、弦楽器などさまざまなスタンドを製造しています。
トレードマークと言えるのが黄色と黒の色使い:
蜂を連想させる(あるいは「勇気の印」)黄色と黒は、その道に詳しい人なら一目でHerculesだとわかります。
Hercules製ギタースタンドの選び方
それでは、Hercules製ギタースタンドの選び方を用途別に紹介します。なお、この選び方はクラシックギターやアコースティックギターを対象としています。
自宅用で安定性の高い1本用ギタースタンド
まずHerculesといえばこれという、自宅用に使うための安定性の高いギタースタンドを紹介します。ここで紹介するのは1本用で、複数本用は後ほどご紹介します。
1本用の選択肢は4種類です。
Herculesといえばこれ!のGS414B PLUS
Herculesのギタースタンドと言われて真っ先に出てくるであろう製品がGS414B PLUSです:
最大の特徴であり、Herculesの題名と言えるのがオートグリップシステム(AGS)。ギターをスタンドに掛けると自動的に外れるのを防止する腕が展開されるシステムです。
こちらの公式動画のギターをスタンドに掛けるところを見ていただけるとわかりやすいかと思います:
さらに、高さ調整がボタンを押しながら上部を上下させるだけでできたり、ギターの背面がスタンドに当たる部分が分厚い特殊ゴム(SFF)で覆われていたりと、とにかくかゆいところに手が届くギタースタンドです。

自宅など一カ所で使うなら間違いの無い1本と言えるでしょう。一応譜面台のように棒状にできますので、使わないときに小さくしまっておくこともできます。
注意点は、”GS414B PLUS”と旧製品の”GS414B”が併売されている点。
主な違いは以下の3点です:
- ネック幅の対応幅が旧製品は約40mm~52mm、PLUSは約40mm~52mm
- 高さ調整が旧製品は普通のクランプ型、PLUSは高さ調整がワンタッチ
- AGSの保持力がPLUSの方が高い
価格を重視するならGS414Bもありですが、あまり変わらないならPLUSのほうが良いでしょう。特にメルカリやヤフオクなどで探す際は、PLUSか否かをしっかり確認してください。
私はこのGS414B PLUSを購入したのでレビューを書きました。AGS、確かに便利です:
ヘッドが折れてより小さく収納できるGS415B PLUS
GS414B PLUSは一応棒状にして小さくできるのですが、ヘッド部が折れないので首が持ち上がったままになります。
折れない分1つの金属でできているので丈夫ともいえますが、使わないときにしまったり、車で移動したりする際は邪魔になるかもしれません。
このヘッド部が折れるようになっているのがGS415B PLUSです:
こんな感じで折れます:

お値段はGS415B PLUSのほうが少し高いです。
また、Hercules製なので丈夫に作られてはいますが、「壊れるリスク」という意味では可動部が多いGS415B PLUSの方が高いでしょう。
首が折れるという点にどれだけ価値を見いだせるかがポイントとなります。
変形ギターに対応したGS412B PLUS
GS414B PLUSやGS415B PLUSは一般的なギターの構造や形を前提とした合理的な作りになっており、それによって安定性と利便性を両立しています。
逆にいえば、普通のギターと異なる形状にはうまく対応できないことがあり、その例が変形ギターです。ギターの底面が一般的な形をしていない場合、安定しません。
そんな需要に応えるのがGS412B PLUSです:
こちらはギターの底面を足で受けるのではなく、背面を主軸から出ている棒で受けます。
デメリットとして、GS414B PLUS/GS415B PLUSは2点(面)で底部を支えているのに対し、こちらは1点なので回転方向の動きに弱いという点があります。
また、重心が上になりますのでその点でも安定性は通常モデルよりも劣るでしょう。
普通のクラシックギターやアコギであえてこれを選ぶことはないかな、と個人的には思います。
ザ・ギタースタンドのGS405B
最後に紹介するのが、HerculesなのにAGSでないGS405Bです:
いわゆる一般的なギタースタンド同様、底面を腕で受け、上部でネックを支える構造です。
AGSは便利なのですが、ギターの上部で保持する構造であることから、重心は上に来ます。また、底部はスタンドの足に自重で当たっているだけです。
GS405Bはギターの重みを底部で支えることから重心が低く、より安定性が高いと言えるでしょう。さらに、ショックアブゾーバー的な構造をしており、ギターを置いた際の衝撃を吸収してくれます。
私は購入するギタースタンドを決める際、GS414B PLUSにするかGS405Bにするか最後まで悩みました。
GS405Bにしなかった理由は、ネックを支える部分の形です。写真を見るとわかりますが、ネックの右側が常に開いています:

こっち方向にギターが倒れたら弱そうかな?と思ってGS414B PLUSにしました。
また、ギターを掛けたり取り出したりするのもAGSに比べて面倒そうです。
私の場合、普段はギターケースに入れ、演奏の時だけギタースタンドを使うため、そこまで安定性を重視していなかったというのもあります。
もしギタースタンドにギターを置きっぱなしにするなら、こちらを選ぶのも良いでしょう。
番外編:昔はクラシックギター用のGS454Bという製品があった
Herculesのスタンドを調べていて見つけたのですが昔は「GS454B」というクラシックギター用のスタンドがあったそうです。

特徴はネックをつかむ部分にあり、クラシックギター用に通常のモデルに比べてワイドになっています:

出典:Amazon
ただ、私が試した限りGS414B PLUSでも問題なくクラシックギターを掛けられました。
昔は通常モデルではクラシックギターに対応できていなかったのに対し、通常モデルで対応できるようになったので廃盤になったのかもしれませんね。
外に持ち出すためのギタースタンド
次にギタースタンド自体を外に持ち出したい場合の選び方です。
Herculesの普通のギタースタンドは2kgくらいあり、車でないとなかなか持ち出す気になりません。
そんな需要に応えるギタースタンドは3種類です。
一番軽いGS200B(EZパック、EZ PAC GUITAR STAND)
一番軽いものがGS200Bあるいは、EZパックと呼ばれるスタンドです:
ギターを3カ所で支えるシンプルなスタンドであり、その分重さは500gとかなり軽く仕上がっています。
シンプルな構造の中でもちゃんと黄色を配しているのがこだわり。こちらはこの黄色部分が可動式となっており、クラシックギターやアコギだけでなく、エレキギターにも対応します
軽いだけでなく折りたたむとこのサイズになるのも持ち出す際のメリットです:

Hercules製なのでシンプルな作りながら安定度は高いと評判ですが、後ろや横から強い力がかかると倒れやすいでしょう。
しっかりした足と腕を持つGS401BB(MINI STAND)
2番目に軽いのがMINI STANDと名付けられたGS401BBです:
EZパックとの最大の違いは足にあります。しっかりとした3本の足が備わっており、スタンド自体が倒れたりずれたりしづらいです。
また、ギター乗せる「腕」もしっかりとしており、EZパックよりも倒れにくいでしょう。腕と背中が当たる部分にSFFと呼ばれる特殊ゴムが使われているのも特徴で、衝撃を緩和してくれます。
もちろん折りたたみも可能です:

重さは1kgと少し重め。徒歩での長距離の移動はつらいかもしれません。
なお、似た商品にGS402BBというものがあり、少し軽いのですが、こちらはエレキギター用なのでご注意ください:
可搬性と安定性のバランスが良いGS301B(TravLite)
最後は「TravLite」という愛称が付けられたGS301Bです:
こちらは普段は自宅などで据え置きにして、たまに持ち出したいという方用に作られています。
見るからに安定性の高そうな構造、そして分厚いSFFでの衝撃吸収を備えながら、折りたたむことで小さくすることができます。

持ち運び以外に、自宅などでの使用でも普段は小さくしてしまっておきたいという需要に応えてくれるでしょう。重さも以外と軽く、GS401BBと同じ0.9kgです。
GS401BBにするかGS301Bにするかという選択肢では、持ち運び時のサイズを気にするかと、安定度をどう考えるかで決まるかと思います。
GS401BBのほうが折りたたんだときに棒状になるので荷物の中に入れやすいです。
一方、安定性が高いのはGS301Bです。また、折りたたみと展開がやりやすいのもGS301Bなので、自宅専用に使うのもありかと思います。
なお、よく似た名前の製品でGS302Bはエレキギター用、GS303Bはウクレレとバンジョー用なのでご注意ください。
複数本のギターを掛けるためのギタースタンド
最後は複数本のギターを掛けるためのギタースタンドを紹介します。
こちらはシンプルで、2本、3本、6本掛けられるスタンドがリリースされており、それぞれGS422B PLUS、GS425B PLUS、GS526B PLUSという名前です:
構造としてはGS412B PLUSと同様、AGS+主軸から出た棒で背面を支える仕組みとなっています。
複数本のギターを1つのスタンドにかけるなら役に立ちそうですが、個人的には3本以上はギター同士がぶつかりそうで怖いです。
ギターをとっかえひっかえ弾きたい方には良い相棒となってくれるでしょう。
複数本のギターを置くなら、ギタースタンドではなくギターラックという選択肢もあります。3本対応のGS523Bと5本対応のGS525Bが発売されています:
底面をキャスターにしたGS523B PLUS/GS525 PLUSという製品もあります:
また、別売りパーツとして、かけられる本数を増やす拡張アダプター HA205もあります:
AGSとどちらが安定性が高いかはなんともいえませんが、こちらの方が好みの方もいるかと思います。
ギターの修理費用よりは格安!
Herculesのギタースタンドはしっかりとした作りかつ人気があるメーカーであることから、他のギタースタンドよりも高価であることが多いです。
ただ、ギターは倒れて壊れると多額の修理費用が必要になります。それに比べればギタースタンドなんて安いものです。
Herculesの安定性はとにかく定評があり、「地震でも倒れなかった!」というレビューをたくさん見ます。
ギタースタンドを買うならぜひ候補の1つにしてください。